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ライトノベルを中心に活動中の作家、空埜一樹のブログです

ゲーム備忘録:真流行り神3

まいど! 空埜一樹です。

 

伝説の魔導王、千年後の世界で新入生になる | HJ文庫公式Webサイト

 

SW-01 桜華


こういうの書いてるラノベ作家です。

皆さんは「都市伝説」というものを知っているでしょうか。
中々に定義の難しいものなのですが、個人的な見解を述べておくと、
「人々の間でまことしやかに囁かれる、出所不明、もしくは縁の遠い者からもたらされた噂話」というものです。
口裂け女人面犬、ひきこさん、ジェットババア、首無しライダー、筑波大学と新宿都庁ビルは緊急時にロボットへ変形する、
なんて話を一度は耳にしたことがあると思います。
「友達の友達から聞いたんだけど」というフレーズで語られることが多いですね。
これをもってして都市伝説を「フレンドオブアフレンド(F.O.A.F)」なんて呼んだりします。

 

前置きが少々長くなりましたが、今回ご紹介するのはその都市伝説をモチーフにしたアドベンチャーゲーム「真 流行り神3」」です。
プレイステーション4、ニンテンドースイッチ等で発売中。

3と銘打たれていることからして分かると思いますが、本作はシリーズものです。
前提としてPS2時代に「流行り神」という作品が発売され、そこから「2,3、真、真2」と来て今回の「3」というわけですね。
考えてみれば結構歴史の長いゲームです。

概要としては、G県警(作中では誤魔化されていますが明らかに岐阜県警)へ密かに設立された「とくそう(「特殊捜査課」ではなく「特殊お客様窓口」)」に所属する主人公が、「都市伝説絡みの事件」を捜査していく、という流れになっています。
各話はオムニバスで展開され「隙間女」「悪魔の人形」「人間スープ」「両面宿儺」など、都市伝説好きであれば馴染みのあるものばかり。

で、ここからが本作の特徴となるのですが、流行り神では1から受け継がれているシステムとして「オカルトと科学、両方の視点で話を進めることが出来る」
というものがあります。
たとえば「一見すると噂に過ぎない隙間女が現実化して起こしたように見える事件」に対して「隙間女がやっていること」を前提として捜査することも出来るが「人間が隙間女がやったことに見せかけている」というように、現実に即したやり方でストーリーを追うことも出来る、という感じです。

他にもポイントを消費することで思い切った決断を選ぶことが出来る「カリッジシステム」や心理学の心得がある主人公が嘘を駆使して相手の本性を暴く「ライアーズアート」などもありますが、ぼくが本シリーズで最も重きを置いているのが、この「一つの事件を科学ルート・オカルトルートの両方で進められる」という点です。
そんなわけで当然ですが評価の軸となるのも、そのシステムが機能しているかということになってくるのですが……。
以下、ネタバレ含むので嫌な方はバック推奨です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ネタバレを恐れない者よ。あるいはプレイ済みの同士よ。
ここまで読んでくれてありがとうございます。


そもそもとして、ぼくは流行り神2を最初にプレイして、元々都市伝説が好きだったこともありその面白さに嵌まり、遡って1をプレイ、
続編と遜色ない出来の良さに感動し大ファンになった、という経緯があります。
ただそれからも「3、真、真2」とプレイしているのですが、正直なところ、1,2と比べるに物足りなかった、という気持ちを抱かざるを得ませんでした。
1、2の頃にあった肌が粟立つような恐怖感が薄れている気がしたのです。
お話自体もギャグに走っていたり、都市伝説とは言えないのではないか、というものもあったりと、失望感を味わったことも事実。
その為、真3が発売すると知った時も不安の方が大きく、これで失敗したらどうしよう……と思いながらプレイしました。
その結果、どうだったかというと、二つのルートを大まかに分けて述べていこうと思います。

 


・オカルトルート

 

あ、ちゃんと流行り神になってる。
本作を終えて初めに抱いたのはそんな感想でした。
真2の頃から旧作の雰囲気が復活しているなとは思っていたのですが、今回は更にそちらを強化したような印象です。
特に隙間女とシークレットシナリオである「悪魔のメルヘンカルタ」はぞわぞわとした恐怖、じりじりと迫るような気持ち悪さが表現されていたと思いました。
悪魔の人形も、元の話がダジャレ落ちなので(娘が父親から人形をプレゼントされて「あ、くまの人形!」と言って終わるというどうしようもないやつ)どうなるかと
思いましたが、「人形関係の都市伝説」に広げて行ったのは良かったかな、と。
同じ意味で人間スープも「風呂に入って追い炊きした瞬間に心臓マヒを起こして亡くなった老人が、そのまま高温でゆでられ続けて肉が溶け、風呂場が
スープ状態になる」という、想像するだけで吐き気を催す話でありながらそれ以上広がりようのないものを、別の都市伝説+現代社会が抱える問題と組み合わせて
発展させるという荒業で完成していたのは面白かったです。

ただやはりなんというか、文章が簡素になっている気はしました。
何度も出してきて申し訳ないのですが、旧作1,2の方がもっとねちっこくて、ずっと背筋を冷たい指先で撫でまわされているかのような、独自の緊張感とおぞましさに特化していたような……。

これに関しては思い出補正があるかもしれないので、また今度、旧作をプレイしようとは思っています。

 

・科学ルート

 

ぼくは「怪奇現象を科学的なアプローチで解決する」という話が大好きなので、流行り神でもこちらを楽しみにしているところが大きかったのですが……。
オカルトルートの後にしたのは理由があります。
どうにも、オカルトに比べると消化不良の面が否めなかったからです。
個人的には「科学は科学できちんと解決するものの、一片、どうしてもそれだけでは納得できない物が残る」というオチになるのが良かったのですが、
(旧作1,2ではその辺りをしっかりやっていた覚えがあります)、今回は「なんとなく科学でクリアできたような感じにはなっているけど、どうもしっくりこないし、中途半端な締めになっている」ものが多かったように思えました。

この原因は、恐らくですが、流行り神というものが長期シリーズ化した結果ではないかと。


旧作1~3ではまだ「怪異なんてありえないけども、ありえないと断じるには無理のある事件が起こる」ということで、上手くオカルト・科学ルートが共存していたのですが、真2辺りからは過去の事件をきっかけに「怪異は存在する」ということが前提になってしまっているので、
科学で解決するには無理が生じてきているのだと思います。
また「怪異を人工的に生み出して利用する組織」の存在が明確化していることが、余計、それに拍車をかけている。

ただ「怪異が絡んでいると思ったら人間が起こしていたものだった」とは出来ると思うので、もし次があるのなら、そういう方向で
科学的な解決をしてもらえたらな、と思いました。


と、まあ、割と後半は批判的な感じになってしまいましたが……旧作に思い入れがあるが故にそうなってしまうのかもしれません。
本作を個別に見れば2よりもっと面白くはなっているので、この調子で次回を期待したいです。


関係ないですが、一応「美人」の類に入るとされている主人公のサキと同じ部屋に泊まっておいて、全く何も微塵として恋愛イベントを起こそうとしなかったセナくんは割に反省した方がいい……!
TRICKの山田さんと上田さんのコンビみたいな感じなんだろうなとは思うんですが。